■ Audio Short Essay  No.23 ■

◇ 第2試聴室のその後-4 ◇

今回は、Tさんのオーディオシステムの低音部の調整をします。 ( 注 : この記事はTさんの了承を得ています )
最初の音出しから、暫定的に設定した特性で、しばらくの間 Tさんに聴いてもらっていましたが、いよいよ
細部の調整に入ることになりました。その後 Tさんは約 200リットル の新キャビネット(バスレフ型)を入手して
いるので、それに合わせて調整をします。バスレフポートは3つで、それぞれ取り外してメクラパネルを
はめて、完全密閉にすることもできます。ウーファ・ユニットは Tさん手持ちの JBL LE15A と GAUSS 5101
を使って測定を開始します。ユニット毎に各4データ計8データを測定しました。その結果ポートを3本使った
状態で、両ユニット共 40Hzから100Hz まで非常にフラットな特性を示しました。40Hz 以下は急激に減衰して
います。古いユニットなので比較的高感度ですが 40Hz 以下の再生は無理なようです。

次に 100Hz 以上をみるとこれもまた急激にレベルが落ちていて 100〜200Hz に -10db の落ち込みがあり、
JBL を GAUSS のユニットに交換してもほぼ同じ特性を示しました。そこで、これはキャビネットに特有の
現象であると考えました。キャビネットの内部はオーディオルームと同様に、多数の共振(定在波)が存在して
おり、いくつもの共振が、近い周波数に集中していると、大きなピークやディップが発生します。これは、内部
に張る吸音材では簡単に取ることは出来ません。いろいろと検討した結果、当初のウーファとミッドバスの
クロス周波数 160Hz を 100Hz に変更し、上記の落ち込みはミッドバスに担ってもらうことにしました。
ここで真価を発揮するのがチャンネル・デバイダ(デバイディング・ネットワーク)です。クロス周波数を
変更するとき、LCネットワークに比べて、変更作業はチャンデバが圧倒的に有利になります。
私は以前から 「圧倒的」 「最高」 「比類なき」 などの言葉は使わないようにしていますが、今回のような
状況ではまさに、この言葉が似合います。100Hz まで再生帯域を引き下げられたミッドバスは多少、荷が
重くなりますが JBL LE14A ですので問題はありません。
その後、改めてリスニング・ポイントの総合特性を測定し、中・高域の改善も行いました。

この状態でCDを掛けてみます。Tさんによると 「今まで聴こえなかった音が聴こえるようだ」 という感想です。
以前よりピーク・ディップが少なくなった特性で聴くと、通常の音量の場合、バランスは良いが、特に驚く
ような音には聴こえません。が、少しボリュームを上げると、そこに実物の楽団が現われた様相になり、非常に
実在感のある音響になります。逆に言い換えると、ある程度大きな音量にしないと、今回の調整の真価は
発揮されないということになります。
もう1点、Tさんが 「好きな曲のひとつで高音が物足りない」 という指摘がありました。これは前回の暫定調整
で高域に少しピークがあり、その結果「好きな曲」の高音部が気持ちよく聴こえていたのかも知れません。
私はTさんに 「少しの間、この状態でいろいろな曲を聴いてください」 とお願いしました。
どうしても人は、最も気に入った曲(レコード)を基準音源にする傾向があるからです。

今回でかなり完成度が増したTさんのオーディオシステムですが、この時点でもジャズもオーケストラも同時
に十分満足な状態で聴くには まだ無理があります。そこで最後に投入するのがヴォイシング・イコライザ
です。Tさんはこの機器をすでに入手しているので、これから実行に移す時期を算段することになります。



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