■ Audio Short Essay  No.22 ■

◇ 第2試聴室のその後-3 ◇

専用オーディオルームを実現したTさんの戦いは、まだ続きます。 ( 注 : この記事はTさんの了承を得ています )

Tさんの4ウェイ・マルチアンプシステムは、数度の調整をした結果、オーディオマニアが羨ましがる
ほどの音響を実現しました。 しかしこの音響から強い感動を得るためにはさらに工夫が必要です。
そこで次に行う対策は適切な残響処理です。 Tさんのオーディオルームは家具が少ないため残響が
強めです。 また、この部屋は 20 畳の天井中央部が 3.6×2.7m の大きさで 2 階の天井まで吹き抜けに
なっていて、がらんどうの空間には音を吸収するものがありません。ここでも反響は大きく、音を濁らす
原因になっていました。そこでスピーカーの周囲、部屋の側面、さらに天井の吹き抜け部分に吸音板を
貼ることにしました。ラボの試聴室で使用している吸音板は大きく重いため、取扱いやすく軽量な
60×90×5cm の自立タイプ・グラスウール吸音板を使うことにしました。表面はガラス布張りです。
厚み 5cmで低域での効きが少し弱いのですが、適材適所で1枚または数枚を重ねて使うことにしました。

大変だったのが、天井の吹き抜け部にどうやって吸音板を貼るかということです。Tさんはこの吸音板の
厚さに合うコ型をしたプラスチックの保持材を見つけてきました。これを両面テープで壁に貼り、吸音板
を差し込むという方法です。試しに1か所だけサンプルの吸音板を貼り、しばらく放置して落ちてこないか
確認しました。そして美しく貼れるように、Tさんと私で何度も取付け方法を検討しました。こうして吹き
抜け部分には計 12枚の吸音板を、外見的には職人が施行したような美しさで貼ることができました。

いよいよ残響測定を始めます。採取したデータ波形を見たとき、すぐに以前より明らかに良くなっている
のが判りました。8 箇所の周波数ポイントで残響時間は 0.2〜0.5秒の間に分布しているようです。

次にCDを掛けてみます。全体に音がすっきりしてきたため、以前より音量を上げることができます。
生演奏を実感する音響にするためには、「音量が上げられる」 ことが重要になります。実際の楽器の音
は想像している以上に大きいからです。いろいろな曲をかけていくと、ほぼすべての曲で臨場感が増し、
生なましく聴こえます。一部の曲ではラボの試聴室で聴いている音響に、非常に近いことが分りました。
Tさんの目標が 「ラボの試聴室の音響を再現する」 ことでしたので、Tさんの喜びは大変 大きかった
ようです。  ----- 今回の対策で感じることは、使用している音響機器が異なっていても、技術課題を
ひとつずつ対策していくと、理想の音響はひとつに収束していくものだ、という事です。 但し、この場合
でも スコーカ (LE85) とツィータ(075) がキモであることに疑いの余地はなく、スピーカユニットは重要で
あると再認識させられます。

次の課題はオーケストラを聴いたときに押し寄せる低音感が、このルームではまだ弱い印象です。
これは低域のバスレフポートの調整や定在波の影響が関係していて、さらに高度な段階へ進む必要が
あります。



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