■ Audio Short Essay  No.15 ■

◇ ラボの第2試聴室を企てたオーディオ愛好家  ◇

今回は、現実に進行中の話の一部をご紹介します。


本年3月のラボ試聴会に初めて訪れたTさん、試聴の合間の雑談で 「私もオーディオ・ルームがほしい」 と

かねがね聞いていました。毎回欠かさず試聴会に来てくれていましたが、秋も深まったある休日、Tさんから

突然電話があり、 「相談したいことがあるが今日の午後、在宅ですか」 とのこと。やってきたTさんの相談

とは、これから新築するオーディオ・ルームの仕様についてでした。

すでにハウスメーカーは決めてあり、メーカーの引いた間取り図面もありました。一度は自分で決定した

仕様図面だが、やはり不安になり私に相談を求めてきたという事情でした。


図面の中のオーディオルームはラボの試聴室と同じ20畳の広さ、私はTさんにオーディオ・ルームに求める

ものは何かを聞きました。彼は 「・・とにかく、このラボの音響が気に入った。将来完成する自分のオーディオ

装置は、ここにあるラボの装置とは異なることは分かっているが、少なくとも、装置を収納するオーディオ・

ルームだけは、このラボと同じ仕様にしておきたい。」 とのことでした。彼の気持ちの中に、装置は違えども

入れ物(部屋)はラボと同じ特性を持っていることを、自分のオーディオ・ライフの基準にしたい ・・という

強い意思が感じられて、私は感動しました。 「・・もちろん建築費用の一部は借金するが、自分の定年が

来てからでは不可能・・」 という冷静さも持ち合わせ、一過性でない彼の決意が私の心に、何がなんでも

成功させてあげたい、という闘志を芽生えさせました。


それからTさんは毎週のようにラボを訪れ、定在波モードに直結する重要な部屋の構造・寸法、残響処理、

内装、照明、電源、採光、冷暖房、工事と合わせてやるべき事、後でもかまわない事、ハウスメーカーとの

付き合い方、無駄を省く方法など・・多項目に渡って私と打ち合わせを行いました。この結果をもってTさんは

ハウスメーカーに3回以上図面を書き直させ、理想のオーディオ・ルームに近づけていきました。


このプロジェクト(大袈裟ですが)はラボの第2試聴室と呼ぶべき内容(音響機器は除く)となっています。

Tさんはオーディオ以外の趣味は少なく、その情熱をオーディオ1本にかけてきたことも、この計画を可能に

した要因ではないか、と新オーディオ・ルームの完成した景色を想像しながら、私は思うのです。

 (注:この記事はTさんの了承を得ています)





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