■ Audio Short Essay  No.11 ■

◇ オーディオの愉しみ ◇

毎回、このエッセイをご覧いただき、ありがとうございます。

どうもオーディオの話になるとコンサルタントという立場がら、上から目線になってしまうことが多く、

私はいつも気に掛けながら原稿を書いているつもりですが、もし気に障ったとお思いの皆様には、

私の強い信念がそうさせていると思って、お許し願いたいと存じます。


ここらで一息いれて、旅の話でもいたしましょう。


昨年の話で恐縮ですが、初夏の頃、私が群馬県の 「たくみの里」 というところを訪ねたときのことです。

ここは標高550mの、里山に囲まれた地域に伝統工芸・手工芸などの工房が点在し、いろいろな体験が

できるところです。この中の一軒をのぞいたところ、陶器、ガラス工芸品が所狭しと置いてある さほど広くない

店内から静かにピアノトリオのジャズが流れてきたのです。そのときは平日で観光客はほとんどなく、静けさの

中で聞こえてくるジャズのなんとも心地の良いこと!音源を探すとミニコンポから音は出ていました。

普段、私は試聴室でかなり大きな音量で音を聴いていますが、こんな小さな音でこの心地良さはなんだろう・・

工芸品を見る目は上の空で、ジャズの心地よいリズムに聞き耳を立てていました。実物大で再現するオーディオ

とは別の世界がそこにはありました。


さらに次の日、浅間山の白糸の滝の近くのレストランに入ったときのことです。このときも店内には

ほとんど客はなく、20席ほどの店内の一角で料理を待っていると、天井からやわらかいジャズの響き

が聞こえてきました。今度は低音まではっきり聞こえ、ウーファは30cm以上だと直感しました。

ここは店の3分の1が中2階になっており、音源はその奥にありました。スピーカから出た音は、吹き抜けの

高い天井と壁に反射して私の耳に届いていました。ここでもその音は特別ハイファイではありませんでしたが

バランスはよく音量は控えめでした。そして聴いている私の心は、非常に穏やかになるのを感じました。


おそらく旅の解放感からそのように聴こえたのかもしれません。オーディオを聴くときの心の状態や、いつもと

違う周りの環境、好きなジャズが重なって心を安らかにしたのでしょう。

今回の旅の体験から、オーディオの愉しみは一つではないという印象を強くしました。






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